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奥社参道「立ち入り禁止」の背景にある、観光と安全のせめぎ合い

冬の澄んだ空気に包まれた戸隠。
雪をまとった杉並木は、写真で見るだけでも息をのむほど美しく、長野を代表する冬景色のひとつです。

その戸隠神社・奥社の参道で、この冬、異例ともいえる措置が取られました。
杉並木が続く参道の一部にネットが張られ、立ち入り禁止となったのです。

観光地である神社の参道が封鎖される――。
この判断の背景には、近年急増している観光客、とりわけ外国人観光客の増加と、そこから生じた安全上の深刻な問題がありました。

※本記事では、SBC信越放送 の報道や、TBSNWESDIGの報道をもとに、なぜ戸隠でこのような事態が起きたのか、その背景と現状、そして今後の課題について整理します。

■ SNSが生んだ「冬の戸隠ブーム」

ここ数年、冬の戸隠神社・奥社は、国内外のSNSで急速に注目を集めるようになりました。

雪に覆われた杉並木の参道。
一直線に伸びる白銀の道と、空へ向かってそびえる巨木のコントラストは、まさに「日本らしい神秘的な風景」として、多くの写真や動画が投稿されています。

特に海外では、

  • 「Snowy Shrine Path in Japan」
  • 「Hidden Winter Shrine」

といった言葉とともに拡散され、行ってみたい日本の絶景スポットとして認知されるようになりました。

SNSでの拡散は、一瞬で世界へ広がります。
かつては冬季に人が少なかった戸隠にも、今では多くの観光客が訪れるようになりました。

■ 増え続ける外国人観光客、その一方で…

長野市や観光関係者によると、戸隠エリアではこの数年、冬季の外国人観光客が急増しています。
特に年末年始から1月にかけては、参道を歩く人の中に、海外からの観光客が目立つようになりました。

しかし、その増加と比例するように、問題も顕在化していきます。

  • 除雪されていないエリアへの立ち入り
  • 雪崩の危険がある斜面への接近
  • 参道脇での無断撮影や立ち入り
  • ゴミの放置、用足しなどのマナー違反

そして、最も深刻なのが 遭難事故の発生 でした。

■ 実際に起きた「遭難事故」

報道によれば、戸隠神社奥社周辺では、昨シーズ は複数の遭難事故 が発生して一人の方が死亡しています。

いずれも、

  • 雪道に慣れていない
  • 適切な装備をしていない
  • 危険区域への安易な立ち入り

といった共通点がありました。

雪に覆われた山道は、見た目以上に危険です。
踏み固められていない場所では、足を取られたり、雪に埋まったりするリスクが一気に高まります。

さらに、戸隠の奥社参道周辺は、雪崩の危険があるエリアでもあります。
条件が重なれば、命に関わる事態にもなりかねません。

■ 「命を守るため」の立ち入り禁止

こうした状況を受け、戸隠神社では参道の一部にネットを張り、立ち入り禁止措置を取りました。

神社の関係者は、
「観光を楽しんでいただきたい気持ちはあるが、それ以上に安全を最優先しなければならない」と話しています。

参道は神聖な場所であると同時に、自然の中にあります。
冬の自然は美しい反面、常に危険と隣り合わせです。

「危険だから入れない」それは排除ではなく、守るための判断となりました。

■ 参道に残されたアイゼンやゴミ 増える「置き去り」の痕跡

戸隠神社奥社の参道周辺では、立ち入り禁止措置とあわせて、観光客が残していった物品の問題も指摘されています。

参道脇や雪の中から見つかるのは、

  • 使われなくなったアイゼン
  • 片方だけ落ちている滑り止め
  • 手袋や帽子などの防寒具

といった装備品です。

雪道に不慣れな観光客が、「歩きにくい」「もう必要ない」と判断して、その場に捨ててしまうケースもあるとみられています。

しかし、こうした物は景観を損ねるだけでなく、雪解け後も長く残り、神域の環境を汚す原因にもなります。

神社関係者は、「自然の中に置き去りにされる物が増えていることに、強い危機感を感じている」と話しています。

■ トイレ不足が招く深刻な問題 雪の中に残された排せつ物

さらに深刻なのが、トイレをめぐる問題です。

戸隠神社奥社の参道周辺には、冬季に利用できるトイレが限られています。

その結果、参道脇や人目につきにくい場所で、

  • 排尿
  • 排便

が行われた痕跡が、複数確認されているということです。

雪に覆われている間は目立たなくても、雪解けとともに露出し、においや衛生面の問題が顕在化します。

これは単なるマナー違反ではなく、環境汚染や感染症リスクにもつながる行為です。

神社や地元関係者にとっては、「自然と信仰の場を守る上で、見過ごせない問題」となっています。

■ 言葉の壁と情報の伝え方

今回の問題で浮き彫りになったのが、情報の伝え方の難しさです。

日本語で書かれた注意書きや看板は、外国人観光客には十分に伝わっていないケースも少なくありません。

そのため、観光協会などでは、

  • 英語
  • 中国語

で書かれた注意喚起のチラシを作成し、配布を始めています。

「知らなかった」
「危険だとは思わなかった」

そうした声を減らすためにも、多言語での情報発信は今後さらに重要になっていきそうです。

■ 観光地としての魅力と、守るべきもの

戸隠は、長野を代表する観光地です。
神話の舞台でもあり、多くの人にとって特別な場所でもあります。

一方で、観光地である前に、そこは 自然の中の神域 です。
自然には、人間の都合は通用しません。

SNSによって人が集まりやすくなった今、
「どこまで立ち入ってよいのか」
「何が危険なのか」

それを、事前に、分かりやすく伝える仕組みが求められています。

■ 冬の戸隠を訪れる前に

もし、冬の戸隠を訪れる予定があるなら、次の点を意識しておきたいところです。

  • 立ち入り禁止区域には絶対に入らない
  • 滑りにくい靴、冬山対応の装備を用意する
  • 天候や積雪状況を事前に確認する
  • 現地の案内や注意を必ず守る

「少しくらい大丈夫だろう」その油断が、事故につながることもあります。

■ 観光と安全、その両立のために

今回の戸隠神社・奥社の立ち入り禁止措置は、観光と安全、その両立の難しさを改めて考えさせる出来事でした。

多くの人に見てもらいたい美しい風景。
しかし、その裏には守らなければならない命があります。

観光地を守るのは、行政や神社だけではありません。
訪れる一人ひとりの意識も、確実に問われています。

冬の戸隠が、これからも多くの人に愛される場所であり続けるために。
今、静かに、しかし確実に、変化が始まっています。

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趣味はおいしいものを食べること、なんて大人ならば基本中の基本かもしれませんが、おいしいものをいただくと幸せな気分になれますよね。
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